海外転勤前に住民票は抜いておこう
海外転勤の前にやっておきたいことの1つが住民票を抜くことです。
海外出張など数ヶ月単位の滞在ではなく、1年~の長期的な海外転勤の場合は必ず住民票を転出しましょう。
はじめての海外転勤だと「住民票を抜くことで、住民税が徴収されなくなるなど、どのようなメリットがあるのだろう」「メリットがある反面、デメリットもあるのではないか」と気になりますよね。
また、ご自身だけでなく、ご家族の住民票をどうするべきかも決めなければいけません。
先に結論からお伝えすると
- 自分の住民票 →転出
- 奥様の住民票 →基本的には転出(検討が必要なケースもある)
がベスト。
海外転勤の場合、なぜ住民票を抜いた方が良いのかをメリットとデメリットを比較しながらお伝えしていきます!
海外転勤者本人の住民票を残した場合、転出した場合のメリットとデメリット
それでは早速、海外転勤者本人が住民票を転出した場合のメリット、デメリットをお伝えします。
海外転勤者本人の住民票を転出した場合のメリットは、住民税の節税
海外転勤者本人の住民票を転出した場合のメリットは住民税の節税です。
住民税は1月1日時点に住んでいた住所地によって都道府県と市町村に支払う税金で、会社員の場合は特別徴収といって給与天引きで6月~その翌年の5月まで納税が行われる仕組みになっています。
もし今手元に給与明細を用意できるのであれば、給与明細の住民税の欄を確認してみて下さい。
その額×12ヶ月分が、あなたが住民票を抜くことで節税できるおおよその住民税の額です。
住民税の額は住んでいる都道府県や市町村、年収、扶養控除などの各種控除の有無によって変わってきますが、例えば都内に住んでいる奥さんと2人暮らしのサラリーマンの方だと25万前後の住民税を1年間に支払っています。
日本に住んでも居ないのに、税金を払い続けるなんて嫌ですよね。
住民票を転出することによって、この数十万の住民税の支払いがゼロに!
ただし、住民税は1月1日時点に住んでいたかどうかによって1年分の納税額が決まります。
住民票の転出を行ってすぐに住民税の支払いが不要になるわけではありませんのでご注意を。
海外転出届の提出は14日~1ヶ月前に可能
デメリットをお伝えする前に、まずは海外転出届を提出する時期についてまとめました。
海外転出届の提出は、原則14日前からとしている自治体が多数。
しかし、中には1ヶ月前からとしている自治体もありますし、「原則的には14日前から。事情があれば、1ヶ月前から」とする自治体もあるなど、自治体によってまちまち。
早めに海外転出届を出しておきたい場合は、自治体のHPをチェックしてみましょう。
ちなみに1月1日に住民票が日本にあると住民税の徴収対象なので、例えば2019年の4月に住民票の転出を行った場合、翌2020年の5末まで住民税を払う事になります。
残念ながら海外転出届を提出してすぐ住民税がゼロになるわけではないのでガッカリしないように気をつけて下さい!
そして、海外転出届は届出を出した日に住民票が抜かれるのではなく、海外転勤の予定日として書いた日に住民票が抜かれます。
つまり、海外転出届を年末までに出しても、実際の海外転勤の予定日が年明けなら、残念ながら来年も住民税も払う事に・・・。
1月1日をまたぐケースで、実際は「1月15日」に海外転勤するのに「12月20日」のように書くのは法律的には違法ですのでお気をつけ下さいね。
海外転勤者本人の住民票を転出した場合のデメリットもあります
海外転勤者本人の住民票を転出した場合のデメリットもあります。
住民票を転出した場合のデメリット
- 住宅ローン控除が受けられなくなる
- 印鑑証明を取得できなくなる
- 日本の銀行口座(一部)の新規開設が出来なくなる
- 日本の銀行口座(一部)の口座を解約する必要がある
- 選挙権を失う
- 子供手当てが受け取れなくなる
- 子供が予防接種や各種健診を無料で受けることが出来なくなる
※住宅ローン控除については、平成28年に法律が改正されたため、住民票が無くても以下に当てはまる場合は引き続き控除を受けることが出来るようになりました。
- 平成28年4月1日以降に取得した住宅
- 住宅取得の6ヶ月以内に、その住宅に住んでいた親族が、ローン控除を受ける年の12月31日時点でも住んでいる
- 海外転勤から日本に戻って、もう1度住む予定がある
このように、住民票が日本に無いことによるデメリットもゼロではありません。
しかし、例えば印鑑証明は日本に居なければ使う機会はほとんど無いですし、海外転勤中も使用出来る日本の銀行もあります!
また、6と7のお子様絡みの件については後ほど述べさせて頂きますが、お子様の住民票を実家にしておけば解決が可能。
このように、デメリットのうちのほとんどは海外転勤者本人の住民票を残さなくても解決出来る問題ばかりです。
海外転勤の場合、年金や健康保険は住民票の転出と関係がありません
海外転勤の場合、年金や健康保険は住民票の転出と関係ありません。
これまで通り厚生年金と社会保険の加入が継続されることになるため、「年金どうなるんだろう?」「日本に帰ったときに怪我をしたらどうなるんだろう?」「住民票が無いと年金や国民健康保険に加入できないのかな?」と悩む必要はないんです。
もちろん、奥様やお子様の扱いも今まで通りなので安心して下さい!
ただし、例外のケースが1つだけあります。
海外転勤先で、現地法人からしか給与が支払われない場合
です。
厚生年金の加入や、社会保険の加入の継続が出来るのは、給与の一部もしくは全額が日本で支払われる場合のみ。
例外ケースに該当してしまった場合は、年金の加入を継続したいのであれば「国民年金」に任意加入するしかありません。
しかし、この例外ケースの場合も「日本国籍を持つこと」が任意加入の条件なので、住民票は無くても大丈夫です。
例外ケースについては、日本年金機構の資料が参考になりますよ。
住民票を転出しても固定資産税や都市計画税、不動産所得の所得税はかかります
住民票の転出を行うと住民税は不要になりますが、残念ながら固定資産税や都市計画税、不動産所得の所得税はかかってしまいます。
例えば海外転勤をする際に、住まなくなった持ち家やマンションや駐車場を貸した場合、所得税を払う義務が生じることに。
日本に住んでいないとはいえ、日本に住宅や土地を持っていたり、収入を得ていたら税金を払わなければいけないんです。
住民票を転出しても、これらはしっかりと払っていきましょう。
奥様の住民票を残した場合、転出した場合のメリットとデメリット
奥様が住民票を残した場合、転出した場合のメリットとデメリットもお伝えします。
奥様の住民票を転出した場合のメリットも、住民税の節税
帯同される奥様の住民票を転出した場合のメリットも、あなたの住民票の転出のメリットと同様に住民税の節税です。
住民税は住んでいる地域や年収や各種控除で変わってくるのでキッチリとした値段はお伝えできません。
しかし、例えば専業主婦の奥様で、あなたが年収500万円の場合、1年間で約20万円近くの住民税の節税が可能になりますよ!
ご自身の分と併せると、かなりの額になりますよね。
奥様が海外に帯同されるのであれば、住民票の転出も検討するべきです!
奥様の住民票を転出した場合のデメリットは、要検討
奥様の住民票を転出した場合のデメリットは要検討の物もあります。
住民票を転出した場合のデメリット
- 印鑑証明を取得できなくなる
- 日本の銀行口座(一部)の新規開設が出来なくなる
- 日本の銀行口座(一部)の口座を解約する必要がある
- 選挙権を失う
- 妊婦健診の助成券が入手できない
- 母子手帳が入手できない
1~4はあなたの場合と同様です。
その他に、海外滞在中に奥様が妊娠した場合、日本に立ち寄って妊婦健診を受けても助成券が無いため実費になってしまいます。
また、住民票を取得し直すまで母子手帳が入手できない可能性が・・・。
もし近いうちにお子さんをと考えていらっしゃるのであれば、奥様とゆっくり話し合って住民票をどうするかを検討するのがベストです。
奥様の、年金や健康保険も住民票との関係はありません
海外転勤に帯同される奥様の住民票を転出することが、奥様の年金や健康保険に影響することはありません。
他の日本に住む会社員の妻(年収130万未満)と同様に、海外に住民票を転出しても、国民年金の第3号被保険者として加入し続けることが可能です!
もちろん健康保険も、あなたの会社の健康保険に加入する事が出来ますよ。
まとめ
今回は、海外転勤する際に住民票を抜いた方が良いかどうかを、住民税の節約などメリットデメリットを比較してお伝えしました。
海外転勤者の住民票を転出した場合、しなかった場合の比較(赤字:メリット、青字:デメリット)
転出した場合 | 転出しなかった場合 | |
---|---|---|
住民税 | 翌年の住民税の支払いが不要 | 翌年も住民税の支払いが必要 |
厚生年金 | 今まで通り | 今まで通り |
健康保険 | 今まで通り | 今まで通り |
住宅ローン控除 | 住宅ローン控除は受けられない | 住宅ローン控除を受けることが出来る |
不動産の所得税 | 支払う必要がある | 支払う必要がある |
選挙権 | 無くなる | 無くならない |
印鑑証明 | 発行できなくなる | 発行できる |
銀行口座の新規開設 | 一部出来ない | 全て出来る |
銀行口座の口座を維持 | 一部出来ない | 全て出来る |
一見デメリットの方が多く見えますが、住民税の節税の額が大きく、住民票を抜いた場合のデメリットは些細な問題が多いです。
海外出勤の際には、基本的には住民票を抜きましょう!
奥様の住民票に関しては、出産や育児が絡むと検討が必要なので、家族で話し合って決めて下さいね。